研究概要 |
【背景・目的】ネフローゼ症候群(FSGS)と小頭症を合併するGM症候群に類似した3症例を対象に臨床・病理所見の相違点を検討した。 【対象】早期腎不全に至った劣性遺伝1家系と、やや腎障害の進行が緩徐な1家系・1弧発例を対象とした。ネフローゼ症候群、中枢神経奇形の臨床症状を呈す3症例(右図2家系A, B、1弧発例C)患児7人において、腎組織像は、FSGSであった。家系A, Bは平均1.8歳で発症し、5.4歳で腎不全に至った。症例Cは、20歳で遅発発症し、23歳で腎不全に至った。すべての症例で小頭症、神経発育遅延など中枢神経障害を認めるととともに、前額狭小、高口蓋などの骨格形成異常(家系A, B)、やGERなどの消化器症状(症例C)を認めた。 【結果・考察】今回検討したA, Bでは食道裂孔ヘルニアがなく、B, C症例では腎障害の発症が遅発性である点が古典的GMの3徴と合致しない。さらに、骨格形成異常も各症例で多様であり、GM症候群はオリジナルの疾患概念よりも、より多彩な表現型(発症時期、障害臓器、重症度)を包含する症候群と考えられる。GM症候群はポドサイトと神経細胞の障害が共存しており、両者の分化・発育に関わる因子の異常が主因と推測される。本症はまれな疾患ではあるが、疾患遺伝子を探索することによりFSGSの発症機序や、ポドサイト、中枢神経細胞に共通する分化発育過程の解明が期待される。特に城ら(Am J Kidney Dis.1991;17:569-77)が報告したてんかん関連腎症は、GM症候群の弧発・軽症例とも考えられ、本症の遺伝子探索を通じて、より日常的に遭遇する疾患の発症機序の解明が期待される。
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