研究概要 |
多系統萎縮症(MSA)は本邦に一万人程の罹患患者がいると考えられるが,その原因および有効な治療戦略は提案されていない。本症はGlial Cytoplasmic Inclusion(GCI)というα-synucleinからなる神経細胞内封入体を特徴とする。α-synucleinが主成分である神経細胞内封入体にはパーキンソン病で認められるLewy小体があるがGCIではsynphilin-1の存在が特徴的である。このことからsynphilin-1とシヌクレイン関連蛋白の関与が疑われている(Acta Neuropathol 2002 103)。我々はこれらの遺伝子の特定のハプロタイプが疾患感受性を規定すると考え,synphilin-1を含むシヌクレイン関連遺伝子のMSA患者群におけるSNPsとEM法を用いたハプロタイプ解析を行った。しかし,これら遺伝子の翻訳領域のハプロタイプ解析では疾患群と対照群で差を見いだすことはできなかった。さらに、病理学的に診断されたMSA患者30例の凍結大脳組織よりmRNAを抽出し,定量的RT-PCR法を用いABI PRISM 7700 sequence detection systemを用い候補遺伝子の発現定量解析を開始した。目的とする遺伝子の発現量と,関連遺伝子領域の遺伝子型との関連を解析中である。柿田は試料の管理と,病理学的な変化を解析し,その候補遺伝子の発現量や遺伝型との関連について考察する。小野寺は,遺伝子発現の定量解析,遺伝子多型解析を担当し、かつ各症例に関して、後の層別解析を念頭に置き、臨床像の解析を行った。
|