研究概要 |
ADおよびnon-AD患者の脳脊髄液がAβ線維(fAβ)形成にどう影響するかを解析し、患者臨床・検査データとの関連を検討したところ、AD群、non-AD群の両者共にfAβ(1-40)およびfAβ(1-42)形成を阻害したが、non-AD群の方がAD群よりも有意に強く線維形成を抑制し、fAβ形成の最終レベルは脳脊髄液中のAβ(1-42)レベルと最も強く逆相関していた。すなわち、AD患者はfAβ形成を促進するような脳脊髄液環境を有していることが明らかになった。この脳脊髄液の解析結果に基づき、血漿において.も同様の現象がみられるかどうかを解析したところ、健常者あるいはnon-AD患者に較べて、AD患者の血漿では、脳脊髄液と同様に、fAβ形成が促進されることが明らかになった(Exp Neurol 2006)。 本研究により、ADでみられるAβ線維化を促進する脳脊髄液・血液環境の検出が、ADの早期診断に有用であることが示された。 また、本研究により、Aβ線維化の修飾がADの予防・治療に重要な標的であることが裏付けられた。ドパミン,セレギリン等の抗パーキンソン病作用のある薬物およびα-リポ酸がAβ重合・線維化を抑制するばかりでなく、fAβを分解する作用があることを初めて示し、それらのAD予防・治療薬としての可能性を示した(BBRC 2006; Neurochem Int 2006)。 さらに、3年間本研究実績に基づき、ADの病態発生機序におけるAβ凝集に関わる分子環境の重要性、Aβ凝集促進環境の制御によるADの治療法について総括し報告した(Curr Pharmac Design 2006 ; Biochim Biophys Acta 2006 ; Cell Mol Life Sci 2006)。
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