糖尿病モデル動物であるSTZマウス、STZラット、高脂肪食負荷マウスならびにob/obマウスでは、骨髄、肝臓、膵臓、脾臓、脂肪組織など、全身の多くの臓器内にプロインスリンを産生する細胞が出現する。そこで、βガラクトシダーゼ・トランスジェニックマウスの骨髄を用いた骨髄移植動物をSTZにて糖尿病にし、βガラクトシダーゼの発現を観察したところ、前述の臓器内細胞にβガラクトシダーゼを産生する細胞が見いだされ、この細胞からインスリンが産生されていた。さらに、インスリンプロモータにGFP遺伝子を接着し、これを過剰発現させたMIP-GFPトランスジェニックマウスをSTZにて糖尿病にした後、各臓器の観察を行ったところ、同様にGFPの発現を観察した。これらのことより、糖尿病では高血糖に反応して骨髄内でプロインスリンを産生する異常な細胞が特異的に誘導され、全身の特定の臓器内へと進入していることが明らかとなった。そこで、各臓器のプロインスリン産生細胞の微細構造を詳細に検討したところ、各臓器細胞に特徴的な形態を持つ細胞からプロインスリンが産生されていた。よって、プロインスリン産生細胞は骨髄由来の細胞が臓器内へと進入し臓器細胞に類似する細胞へと分化したものか、あるいは臓器細胞と細胞融合して生じた可能性があり、その役割も含めて詳細な検討を行っている。
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