研究課題
グレリンは、成長ホルモン分泌促進、摂食亢進や体重増加、消化管調節やエネルギー代謝調節に機能する。グレリンは、摂食抑制に機能する脂肪細胞から産生されるレプチンと機能的に拮抗し、迷走神経求心路を介して末梢の空腹情報や成長ホルモン分泌に関する情報を視床下部に伝達する。一方、腸管で産生される消化管ペプチドコレシストキニン(CCK)は、グレリン同様、迷走神経求心路を介して満腹情報を伝達する。これら迷走神経を介したエネルギー調節は、迷走神経の神経節で合成される受容体の輸送や生合成の変化によって複雑に調節されている。今回私たちは、消化管ペプチドペプチドYY(PYY)の摂食抑制作用が迷走神経の神経節で合成されたY2受容体を介して、迷走神経求心路により満腹情報を伝達していることを明らかにした。迷走神経は末梢のエネルギー情報を中枢に伝える重要な経路であり、加齢にともなう自律神経系のトーヌスの変化が、満腹情報や空腹情報の伝達に障害し、中年期以降に生じる肥満やソマトポーズの要因になっていることが示唆された。また新たに、オーファン受容体であったGPR7とGPR8のリガンドとして、ニューロペプチドW(NPW)を視床下部から単離した。NPWは、ラットの暗期摂食と絶食後の再摂食を抑制し、体温の上昇、エネルギー代謝の亢進を引き起こす。加えて透過性ポンプによるNPWの慢性投与を受けたラットはやせを呈する。NPWの作用を中和する、抗NPW抗体の投与によって摂食が亢進する。さらにNPWはラット胃にも産生細胞を有し、その多くはガストリン細胞と共存していた。これらのことからNPWは中枢においてカタボリックに機能するとともに、末梢においても胃酸分泌調節に関与している可能性がある。本研究は、消化管ペプチドによる摂食調節機序の障害が、肥満の原因の一つであり、生活習慣病の発症に深く関与している可能性を示唆した。
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