研究課題
ペプチドーム・ペプチドミクスを活用したペプチドの網羅的解析を行えば、前駆体蛋白由来のペプチドフラグメントが多数同定でき、その前駆体蛋白の遺伝情報や新たに同定したペプチドフラグメントのアミノ酸配列から生理活性を有するペプチドが推定可能であると考えられた。実際にこの方法を培養細胞株に適用した結果、約200個のペプチドフラグメントが同定された。その中から摂食・エネルギー代謝に重要と推定されるペプチドを合成し、ラット脳室内に投与してその生物活性を評価した。ラット脳室内投与後の摂餌量を測定し、用量依存的に摂食を増やす新規生理活性ペプチドを同定した。同定したペプチドのアミノ酸配列に基づき、ラット組織よりペプチドをコードするcDNA配列を決定し、ペプチド前駆体構造を明らかにした。その結果、新規ペプチドフラグメントの前駆蛋白のノックアウトマウスにて著しいやせ、自発運動増加を示し、肥満モデルマウスとの交配で肥満を改善させ、インスリン感受性を増す既知遺伝子のペプチド断片であることを見いだした。脳内神経核のmRNA発現量について定量PCRを行った結果、摂食・エネルギー代謝調節に重要な視床下部・延髄の神経核に発現し、絶食でその遺伝子発現量が変動することを認めた。家兎に免疫して新規ペプチドの特異的抗体を作製し、高感度RIA系を開発した。この定量系を用いて新規生理活性ペプチドの脳内免疫活性を検討した結果、視床下部弓状核など摂食調節に重要な神経核に免疫活性を認めた。特に視床下部弓状核において、強力な摂食亢進ペプチドであるニューロペプチドYと共存することを見いだした。網羅的ペプチド解析の結果、新規摂食調節ペプチドの同定に成功した。
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