研究概要 |
本研究は新規の膜型脂肪酸受容体として同定されたG蛋白共役7回膜貫通型受容体、GPR40の発現調節機構や病態的意義の解明を目指して行われた。本年度はヒトにおけるGPR40の発現と病態的意義に関してさらに解析を進め、膵臓癌外科手術時に得られた新鮮なヒト正常膵臓組織におけるGPR40の遺伝子発現がインスリン分泌能の指標であるインスリノジェニック・インデックスと有意な正の相関を示すことを明らかにし、長鎖脂肪酸が修飾するグルコース応答性インスリン分泌におけるGPR40の機能的意義が示唆された。さらに、遺伝的肥満・糖尿病モデルラットから調製した単離膵島では長鎖脂肪酸によるグルコース応答性インスリン分泌の刺激が著明に減弱していることが明らかとなり、GPR40のダウンレギュレーションを伴っていることが実証された。また、野生型ラットの単離膵島を用いたバッチ・インキュベーションの実験において長鎖脂肪酸の長期曝露がGPR40のダウンレギュレーションを引き起こすことも明らかとなった。 従来、長鎖脂肪酸の側脳室内投与が動物の摂食を強力に抑制することが知られており、脂肪酸が担う視床下部シグナルのゲートウエイとしてGPR40が機能する可能性を探索した。我々葉最近、胎内低栄養母体から出生したマウスにおける肥満感受性の獲得を報告しているが(Cell Metabolism,1:371,2005)、このようなマウスの視床下部においてGPR40の遺伝子発現が明らかに低下しており、高脂肪食負荷で一層、その低下が強調されることが明らかとなった。
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