研究概要 |
脳視床下部と脂肪細胞に発現し、中枢性の摂食抑制作用を示す新たな分泌蛋白であるNAPに対する抗体作成を試みた。prohormone convertase(PC)はLys-Arg/Arg-Argを認識してprocessingを行うが、NAPはラット脳視床下部でPC-1/3およびPC-2と共存していることが判明した。そこで、PCによりprocessingを受ける可能性のあるNAP構造を、そのN端側からNAP-1,NAP-2,NAP-3,NAP-4と命名し、それぞれの部位を特異的に認識する各ポリクロナル抗体を家兎より得た。これらの認識部位はラット、人と相同性が非常に高い。まずラット視床下部抽出物サンプルおよびラット髄液サンプルのWestern blotをこれらの抗体を用いて行うと、47.5kDaの全長NAPに一致する明瞭なバンドを両サンプルで認めた。一方、NAP-1抗体により、10kDaに相当するバンドを認めたが、NAP-2,NAP-3,NAP-4の各抗体ではこのバンドは認めなかった。またNAP-1抗体により認められたバンドは合成NAP-1の混在により消失した。これらの事実は全長のNAPとprocessingを受けたNAP-1が脳内で存在することが明らかになった。人血液蛋白のWestern blot解析では、全長のNAPに一致する47.5kDaのバンドを認めている。 これらの成績より、摂食抑制作用を示すNAPとNAP-1がラット脳内と髄液中でも確認され、NAPが人血中にも存在することが認められた。
|