研究課題/領域番号 |
16659252
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中尾 眞二 金沢大学, 医学系研究科, 教授 (70217660)
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研究分担者 |
近藤 恭夫 金沢大学, 医学部附属病院, 助手 (10322116)
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キーワード | ペプチド / MHC分子高結合性CTL / 腫瘍抗原 / 自己抗原 / ワクチン療法 / 同種造血幹細胞移植 |
研究概要 |
BIMASのソフトウェアを用いたアルゴリズム解析の結果、細胞周期調節タンパクであるCDK2、CDK3、CDK4、CDK6タンパク分子のアミノ酸配列の中からHLA-A*2402分子上に提示可能な9merのペプチドが同定された。各々のタンパク分子は別々の遺伝子にコードされているが、CDK2由来のペプチド(CDK2_<167-175>)とCDK3由来のペプチド(CDK3_<167-175>)、CDK4由来のペプチド(CDK4_<179-187>)とCDK6由来のペプチド(CDK6_<181-192>)のアミノ酸シークエンスは同一であり、CDK2_<167-175>/CDK3_<167-175>とCDK4_<179-187>/CDK6_<181-192>間の相同性も高かった。HLA-A*2402を遺伝子導入したT2細胞上のHLA-A*2402分子は、抗原と結合していない状態では不安定であったが、合成したCDK2_<167-175>あるいはCDK4_<179-187>ペプチドをA24-T2と伴にインキュベートしたところ、細胞表面上のHLA-A*2402分子の発現はペプチド濃度依存性に安定化した。この結果から、HLA-A*2402分子に結合したCDK2_<167-175>及びCDK4_<179-187>ペプチドは、A24-T2によってCD8陽性T細胞に提示されることが確認された。HLA-A*2402陽性健常者の末梢血単核細胞(PBMC)からmagnetic beadsを用いて分離したCD8陽性T細胞を、CDK2_<167-175>ペプチドをパルスしたA24-T2 (CDK2_<167-175>-T2)で繰り返し刺激し誘導したCTLは、CDK2_<167-175>-T2を特異的に傷害した。同様にCDK4_<179-187>-T2で刺激し誘導したCTLはCDK4_<179-187>-T2を特異的に傷害した。この結果から、自己抗原であるCDK2_<167-175>、CDK4_<179-187>に対する寛容(トレランス)は健常者では強固なものではなく、in vitroでの抗原刺激によってペプチド特異的CTLが容易に誘導されることが示された。一方、急性骨髄性白血病細胞と急性リンパ性白血病細胞では健常者のPBMCに比べてCDK2、CDK4タンパク分子が過剰発現していることがwestern blottingにより確認された。以上の結果から、HLA-A*2402健常者ではCDK2_<167-175>及びCDK4_<179-187>に対するT細胞の末梢性トレランスが不完全であり、同種造血幹細胞移植後白血病患者ではCDK2_<167-175>及びCDK4_<179-187>を標的としたワクチン療法によって抗原ペプチド/MHC分子高結合性CTLを誘導できる可能性が示唆された。
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