従来の免疫不全SCIDマウス、NOD/SCIDマウスにヒト造血幹細胞を移植しても、ヒト巨核球・血小板造血をマウス体内で構築することは不可能であった。唯一の方法として海外では、ヒト胎児骨を免疫不全マウスの皮下に移植し、その局所にヒト造血幹細胞を移植する方法が取られてきた。しかしながら胎児組織の利用は、我が国では倫理的な問題もあり、実際の利用はきわめて困難である。NOD/SCIDマウスでは、ナチュラルキラー細胞活性が高いことが欠点とされており、(財)実験動物中央研究所がNOD/SCIDマウスとinterleukin-2レセプターγ鎖ノックアウトマウスを掛け合わせ、新規にNOD/SCID/gamma null (NOG)マウスを作製した。放射線照射したNOGマウスにヒト臍帯血、骨髄血、末梢血由来の造血幹細胞を移植したところ、マウス骨髄内にヒトCD41陽性の成熟した巨核球、マウス末梢血中にヒト血小板を検出することを確認した。照射する放射線の総量、線量率、移植する細胞の種類、細胞数について、様々な検討を行った。マウスにヒト臍帯血由来造血幹細胞を移植後、経時的にヒト血小板キメラ率を測定したところ、移植後半年以降も継続してヒト血小板が検出されることを確認した。試験管内でヒトトロンボポエチンレセプターを刺激する化合物の評価をコロニーアッセイ法などで進めており、本研究で樹立したヒト巨核球・血小板造血モデルマウスは、候補化合物の血小板造血刺激能を評価するうえで、有用と考えられた。
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