研究概要 |
平成16年度は以下の実験結果を得た: 造血能測定法のDexter培養原法に種々の修飾を加え、間質(ストローマ)細胞の細胞膜上に発現する分子の造血幹細胞支持能を無血清培養系で測定した。造血幹細胞は骨髄単核細胞分画から、抗体カクテルを利用してKSL細胞(c-kit^+,Sca-1^-,lin^-)として分離し実験に供した。膜型糖蛋白分子mKirre/NEPH2やWntファミリー分子(Wnt2、Wnt3a、Wnt5a)など、単離した候補遺伝子クローンを間質細胞株又は非間葉系細胞株に遺伝子導入して得られる安定導入細胞株を用い、LTC-IC法(Long-term culture initiating cell assay)にて造血支持能の変化を解析した。間葉系細胞で発現している造血幹細胞を制御する膜型・分泌型蛋白分子は、N末端シグナル配列を持つ蛋白質が細胞膜へ輸送されることを利用した発現クローニング法、シグナル配列単離法、を応用して実施した。Wntファミリー遺伝子はDegenerate RT-PCRを用いて同1定し、全長遺伝子を取得した。同定された膜型糖蛋白分子mKirre/NEPH2やWntファミリー(Wnt2、Wnt3a、Wnt5a)遺伝子を、無血清培地中で培養可能なマウス問質細胞(または非間葉系細胞)に導入後、KSL細胞(c-kit^+,Sca-1^-,lin^-)と共培養した。Wntファミリー分子単独では造血幹細胞増殖/造血支持能が促進されなかった。また、間質細胞に発現させたmKirre/NEPH2膜糖蛋白分子は造血支持能を有し、siRNAでmKirre発現を抑制すると、この造血支持能は有意に抑えられたが、非間葉系細胞に発現させると造血支持能は見出されなかった。間葉系細胞に特異的な他の因子との相互作用が示唆された。
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