研究概要 |
Ro52は分子量52KDでRing finger, B Box, Coiled CoilドメインとさらにC端にRet Finger Protein(RFP)ドメインを有する分子である。この分子に対する自己抗体はシェーグレン症候群(SS)やSystemic Lupus Erythematosus(SLE)等の自己免疫疾患の患者から特徴的に検出されており、SSの診断マーカーとなっている。Ro52を認識する自己抗体が高頻度にみられるSSでは唾液腺などにリンパ球の浸潤がみられるがそのリンパ球はCD4陽性のT細胞であり、抗原刺激により活性化されている事も明らかになっている。このようにSSの病態においてT細胞の役割は非常に重要である。しかし現在のところ、この自己抗体産生に関する免疫寛容破綻のメカニズムやRo52の機能については全く明らかにされていない。我々は機序解明の糸口として、Ro52の過剰発現Jurkat T細胞株を作成したところ、CD3+CD28刺激のみならずCD28の単独刺激においてもIL-2産生の亢進がみられた。一方Jurkatの内在性のRo52をノックダウンさせるとCD3+CD28刺激でIL-2の産生がコントロールに比べて有意に減少した。この現象はRo52がCD28の活性化経絡に関与していることを示しており、Ro52の発現上昇がCD28の感受性を引き上げその結果、免疫的寛容を破綻させ、自己免疫疾患への引き金となる可能性を強く示唆した。さらにこの過剰発現の実験により、CD28刺激の際にRo52が局在変化を起こす事も明らかになった。以上より我々はRo52が引き起こす、IL-2産生機序解明のため、Ro52結合分子を探索してきた。その結果、Ro52と共局在し、共沈する分子を数個明らかにした。これらは、DCP1(Decapping enzyme 1)、DCP2(Decapping enzyme 2)でいずれもp-body(Processing body)と呼ばれる細胞質の小体に局在する分子であった。この両分子はmRNAのDecappingに関わる分子でmRNA量を負の方向に制御している。今後Ro52がDecapping活性に関わるメカニズムを明らかにして行く予定である。実際、T細胞活性化機構にはRNAのDegradationが関わる事が明らかになっているが、Ro52とDCP2がこのRNA Degradationにどのように関わるのかについても今後検討して行く。
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