研究概要 |
近年,関節リウマチ(RA)においてシトルリン化蛋白に対する自己抗体が見出され,RAでの高い感度と特異性からその臨床的意義が注目されている.我々が見出したカルパスタチン(CS)に対する自己抗体は感度こそ81%と高いものの特異度の点で抗シトルリン化蛋白抗体に劣っていた.しかし最近,赤血球由来CSを用いた抗体検出系では高い感度と高い特異性が報告されており,この事実は自己抗体反応性がCS分子の翻訳後修飾による潜在性エピトープに依存する可能性を示唆している.そこで本研究では,RAにおける自己免疫異常のターゲットの一つと考えられるCSについて種々の修飾を施すことによって自己抗体反応性がどのように変化するかを検討することを目的とした. 1.ヒトリコンビナントCS分子の発現と精製 既に分離していたヒトCSをコードする全長cDNAを発現ベクターpET28aに組み込んで大腸菌に生物活性のあるCSを発現させた。この組み換えCSをニッケルキレートカラムを用いて精製し,以下の実験に用いた. 2.非修飾ヒトリコンビナントCSに対するRA患者血清の反応 r-CSをマイクロタイタープレートに固相化し,抗CS抗体測定のELISA系を作成した.この方法で,RA患者血清32例中26例(80%)に抗CS抗体が検出され,特異度は69%であった.またヒト赤血球CSを抗原に用いて同様の測定を行ったところ,陽性25%,特異度100%であった. 3.修飾CS分子を用いた抗CS自己抗体反応性の検討 精製ヒトリコンビナントCS全長分子を,PADI(peptidylarginine deiminase)によりin vitroでシトルリン化した.このシトルリン化CSを抗原としたELISAでRA患者血清の抗体を測定したところ,RAでの感度は88%に上昇したが,特異度は44%と低下した.
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