研究概要 |
近年,関節リウマチ(RA)においてシトルリン化蛋白に対する自己抗体が見出され,RAでの高い感度と特異性からその臨床的・病因的意義が注目されている.本研究では,RAにおける自己免疫のターゲットの一つと考えられるカルパスタチン(CS)をシトルリン化することによる自己抗体反応性の変化を検討すること,また関節炎モデルマウスにおける抗シトルリン化蛋白抗体の産生を検討することを目的とした. 1.修飾CSを用いた抗CS自己抗体反応性の検討 ヒトCSをコードする全長cDNAを発現ベクターpET28aに組み込んで大腸菌に生物活性のあるCSを発現させた.この組換えCSをキレートカラムで精製し,マイクロタイタープレートに固相化して,抗CS抗体測定のELISA系を作成した.この方法でRA患者血清32例中26例(80%)に抗CS抗体が検出され,特異度は69%であった.精製組換えCS分子を,PADI(peptidylarginine deiminase)によりin vitroでシトルリン化した抗原を用いると,RAでの感度は88%に上昇したが,特異度は44%と低下した. 2.関節炎モデルマウスにおける抗シトルリン化蛋白抗体の検出 T細胞刺激伝達系の主要分子であるZAP70の変異によりヒトRAに類似する慢性自己免疫性関節炎を自然発症するSKGマウスにおいて抗シトルリン化蛋白抗体の産生を検討した.9ヶ月齢のSKGマウスの30%に抗CCP抗体が検出され,その少なくとも一部はシトルリン化フィラグリンと反応するが非修飾フィラグリンとは反応しないため,シトルリン化ペプチドを特異的に認識すると考えられた.また,IL-6ノックアウトSKGマウスは関節炎を全く発症しないにも関わらず,抗CCP抗体産生が認められた.このことより,SKGマウスにおける抗シトルリン化蛋白抗体は関節炎発症とは独立した事象と考えられた.
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