本研究はNF-kB活性化に重要な役割を持つIKKおよびIKK活性化酵素であるNAKを標的として、新規阻害剤を開発することを目的として行われた。新規阻害剤に対するシーズ化合物として、IKK阻害活性を持つアスピリンおよびJ型プロスタグランジン(PGJ)を用いた。アスピリンを基本骨格として10種類程度の誘導体を化学合成し、in vitroおよびin vivoにおいてIKK阻害活性あるいはNF-kB活性化阻害作用を検討したが、アスピリンと同等以上の阻害活性をもつ化合物は得られなかった。一方、PGJを基本骨格とした誘導体を20種類程度化学合成して上記と同様にIKK阻害活性およびNF-kB活性化阻害活性を検討したところ天然型PGJと比較して10倍程度高活性を持つ新たな誘導体が得られた。本誘導体は細胞内において、リコンビナントIKKと同様に複合体を形成するIKKに対しても阻害効果を示し、また細胞に投与するとTNF-aあるいはIL-1b刺激によるNF-kB活性化を顕著に抑制した。以上の結果から、本研究により合成された新規誘導体は天然型PGJに比較して非常に高活性を持つ薬物と考えられ、今後新たな抗炎症剤として開発することを目的に、体内動態あるいは個体レベルでの抗炎症効果等を検討していく予定である。
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