研究概要 |
本年度は,免疫不全マウス(rag2^<-/->γ-chain^<-/->)皮下への正常ヒト皮膚(真皮部)の移植が可能かを検討した。これまで,生検により得られた健常人皮膚8検体,強皮症患者皮膚1検体を免疫不全マウスに移植し,以下の知見が得られた。 1.移植後最長4ヶ月に渡って観察したが,移植片に対する拒絶反応はなく,2ヶ月までは正常皮膚でも移植片の増大傾向(体積で3倍程度まで)を認めた。移植した健常皮膚の増大は2ヶ月を過ぎると消失したが,強皮症患者由来皮膚では増大傾向が持続した。 2.組織染色(ヘマトキシリン-エオジン染色,マロリー染色)により,移植片に含まれる線維芽細胞の生存および細胞外マトリックスの構築が維持され,一部では線維芽細胞のコロニー形成がみられた。現在,Ki67やPCNAの免疫染色およびBrdU投与後の免疫染色による線維芽細胞の増殖能の検討を行っている。 今回の検討から,少なくとも正常皮膚の真皮部分が免疫不全マウスに長期に渡り生着することが確認された。今後は,移植した強皮症真皮で線維芽細胞の増殖やTGF-βシグナル亢進(リン酸化SmadsやCTGFの検出)など強皮症患者組織にみられる病態がマウスのin vivoで維持されるかを調べる。 さらに,抗TGF-β抗体投与により移植片の増大傾向を抑制し得るかどうかも検討する。
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