我々は、臍帯血と同様に、従来廃棄されてきた、胎生期由来の組織である胎盤にも、未分化な幹細胞が含まれているのではないかと着想し、その細胞療法や再生医療への臨床応用の可能性について検討した。 母親の同意を得た後、出産時に分娩された胎盤から分離された細胞を、約4週間培養することにより、間質系幹細胞の樹立に成功した。 樹立された間質系幹細胞は、フローサイトメトリーでは、従来の報告と同様に、CD45low、CD31-、AC133-CD54+、CD29+、CD44+であった。また、PCRによる検討では、幹細胞マーカーであるOct-4、Rex-1、血液/内皮系細胞マーカーであるHoxB4、GATA-2、CBFβ、TAL-1、CD34、flk-1、flk-1、Tie-2、心筋マーカーであるGATA-4、腎臓マーカーであるrenin、骨格筋マーカーであるmyogeninnestin、神経系マーカーであるGFAP、肝細胞マーカーであるα-1-fetoprotein、膵細胞マーカーであるamylaseを発現していた。さらに、これらの胎盤から樹立された間質系幹細胞は、培養条件をかえることにより、骨細胞や脂肪細胞に分化する能力を有していた。 以上の結果は、従来廃棄されてきた胎盤の中には、間質系幹細胞が含まれていることを示しており、胎盤は、種々の細胞療法や再生医療に応用可能な細胞の供給源となり得ると考えられた。
|