染色体転座形成メカニズムを解明するうえで非常に重要な手がかりを与えてくれる5つの新しいキメラ遺伝子を同定した。 t(2;21)(q11;q22)を有するT細胞型急性リンパ性白血病(T-ALL)症例からAMLlの新たな転座相手LAF4を同定した。LAF4はB前駆型ALLにみられるt(2;11)(q11;q23)ではMLLと融合し、AML1とMLLのキメラに共通する初めての遺伝子であった。このことはAML1とMLLが共通のメカニズムにより再構成を起こす可能性を示唆する。 また、3例の白血病症例でMLLの切断点集中領域(BCR、エクソン5から11)の外側での切断を初めて同定した。MLLの切断点は、t(4;11)(q21;q23)を有するB前駆型ALL(CD10陰性)症例ではイントロン17に、t(6;11)(q27;q23)を有するγ/δ型T-ALL症例ではイントロン13に、t(11;17)(q23;q25)を有する治療関連急性骨髄性白血病(t-AML)症例ではイントロン4cに存在すると考えられた。これらの症例のMLLの切断点近傍に従来のBCR内の切断部位と共通の配列があるかどうかについて現在検討中である。 さらに、t-AML症例からこれまで我々が報告した1例のみでしか同定されていないMLL-p300を同定した。MLL-p300と同じ性質を持つと考えられるMLL-CBPを有する症例がほぼ全例t-AMLであるのと同様に、MLL-p300も2例ともがt-AMLから同定され、t-AMLの原因となる染色体転座のメカニズムを明らかにするうえで重要な手がかりになると考えられた。 現在以上の症例の切断点を詳細に解析している。今回同定した新しいキメラ遺伝子は染色体転座のメカニズムを明らかにするだけでなく、キメラ蛋白の未知の性質を明らかにするのにも重要な手がかりを与えてくれると考えられた。
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