研究概要 |
慢性活動性EBV感染症の根治的治療として,現在有効とされているものは造血幹細胞移植が唯一であるが,移植合併症が多く,そのことが治療成績の改善に繋がらないことが示唆されている。そこで造血幹細胞移植におけるサイトカインの動向について検討した。 5例の慢性活動性EBV感染症患者に対して造血幹細胞移植を行った。2例は非血縁一致骨髄,2例は血縁HLA不一致(1座および2座)末梢血および骨髄,1例は血縁一致骨髄ドナーを用いた。感染細胞については1例はNK細胞,3例はαβT細胞,1例はγδT細胞であった。全例生着し,EBVゲノムは陰性化したことより,EBV感染細胞は同種造血幹細胞移植により駆逐されることが明確に示された。しかし,血縁一致骨髄移植以外はその後grade III〜IVのGVHDを発症し,移植合併症により死亡した。 GVHDの際にはgranulysinやTNF αが高値を示していた。しかし,死亡直前まで移植前の感染EBV細胞が検出されなかった(即ち再発はなかった)ことも確認された。 CAEBV患者以外の非血縁造血幹細胞移植18例についても同様の検討を行ったところ,GVHDの発症や重症度と血清granulysin値がよく相関を示した。前年度の研究によりEBV感染細胞が直接granulysinやTNF αを高濃度産生すること,granulysinとTNF αの産生が相関する事,またEBV細胞がNFKβの活性化を介してTNF αの産生を促す,という他施設からの報告があることなどから,CAEBV患者では造血幹細胞移植においてgranulysinやTNF αの産生が亢進しやすい病態が背景にあること示唆された。 CAEBVにおける造血幹細胞移植においては前処理や同種反応に起因するサイトカインの異常産生を如何に制御するかが重要である事が明確に示された。CAEBV患者におけるサイトカイン産生異常についての機序解明については更なる検討が必要である。
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