平成16年度、エレクトロンスプレーイオン化タンデム質量分析法(タンデムマス)をスフィンゴリピドーシス診断へ応用する試みをおこない、以下のような成果を得た。 1)スフィンゴミエリンの標品をクロロホルム/メタノール溶液に溶解しタンデムマスにて分析した。既報のとおりprecursor ion scan for m/z 184にて、結合している脂肪酸の種類に応じた各々の分子種のスフィンゴミエリンのイオンピークがみとめられた。またスフィンゴミエリンのイオンピークのProductイオンを測定したところm/z 184のピークがみとめられた。 2)コントロール、Niemann-Pick type C、それぞれの肝臓約200mgより脂質を抽出し、Forch分配法にて脱塩した後にタンデムマスを用いて分析をおこなった。precursor ion scan for m/z 184にて、コントロール、Niemann-Pick type Cともにスフィンゴミエリンのイオンピークがみとめられた。 3)我々はこれまでにsphingosylphosphorylcholine(SPC)を内部標準物質としてMALDI TOF/MSを用いてスフィンゴミエリンの半定量をおこなってきた。今後、同様にタンデムマスにSPCをもちいてスフィンゴミエリンの半定量をおこない、Niemann-Pick病をはじめとするスフィンゴリピドーシスの脂質分析をおこなう予定である。 4)またタンデムマスをもちいてCeramide monohexoside(CMH)の分析、半定量をおこない、Gaucher病患者の組織および体液中のCMHの蓄積についても測定をおこなう予定である。 タンデムマスを用いたスフィンゴリピドーシス診断の可能性は十分に高いと考えられ、今後実用化に向けて研究を発展させてゆきたい。
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