前年度までに正常心筋由来cDNAライブラリーを回復期の川崎病患児血清を用いてSEREX解析を行い、合計19個の新規遺伝子を単離した。これらのうちの3クローンについてのインサートcDNAの解析を行った。クローン1gは全長2664bp、クローン2aは1537bp、クローン1fは501bpで、それぞれ241、118、129アミノ酸からなるタンパク質をコードしていた。それらは様々なウィルスのhypothetical proteinと比較的高い相同性を示したが、未知タンパク質と推定された。心筋炎や冠状動脈に炎症をきたした川崎病患児心臓、対照として心臓にいかなる炎症も認められなかった病理解剖心臓を用いてクローン1f遺伝子の発現についてRT-PCR法で解析したところ、川崎病患児2例に低レベルの発現が認められた。正常(非炎症性)心臓では発現は認められなかった。1fはヒトに潜伏感染するウィルス由来であると推定された。川崎病急性期にはCD14単球の活性化が見られることから、川崎病急性期患児の抹消血単核球について1f遺伝子の発現を解析したが、1fの発現は認められなかった。さらに、川崎病急性期患児の抹消血単核球よりcDNAライブラリーを作成し、γ-グロブリン治療歴のない川崎病急性期患児のアロ血清でスクリーニング(SEREX解析)したところ、合計8個の陽性クローンを単離した。SEREX解析では二次抗体(患者血清)での反応の前に一次抗体(抗IgG抗体)で処理することでIgGクローンの排除を行っているにもかかわらず、それらのうち5個はImmunoglobulin heavy constant gamma1(IGHG1)に由来していた。インサートcDNAの塩基配列にはデータベース上のIGHG1と異なった塩基配列が存在する箇所もあり、現在その意義について解析中である。
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