研究課題/領域番号 |
16659281
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
小林 圭子 鹿児島大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教授 (70108869)
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研究分担者 |
佐伯 武頼 鹿児島大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (10056070)
廣瀬 伸一 福岡大学, 医学部, 助教授 (60248515)
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キーワード | citrin / SLC25A13 / てんかん / aspartate-glutamate carrier / malate-aspartate shuttle / NADH shuttle / 成人発症II型シトルリン血症(CTLN2) / 胆汁うっ滞性新生児肝炎(NICCD) |
研究概要 |
遺伝性のてんかん症例において、責任遺伝子の同定とその異常が少しずつ明らかになってきている。しかし、人口の約1%が「てんかん」と診断されていることから考えると、同定された遺伝子に異常が見つかる例はごくわずかである。本研究は、てんかんと診断され、原因が明らかでない症例に、citrin欠損症が存在する可能性、あるいはSLC25A13変異ヘテロ接合体が高頻度で検出される可能性などを検討し、脳器質病変発症の分子機構解明の手がかりを得ることを目的とする。 Citrin欠損症は、生後1歳までに胆汁うっ滞性新生児肝炎(NICCD)に罹患し、適応・代償期を過ごし、重篤な成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)をひき起こす。SLC25A13の既知・新規変異診断法を確立し、本年度新たに国内外のNICCD症例54例(日本人32例、中国人15例、ベトナム人2例、韓国人1例、白人3例、イスラエル人1例)及び日本人CTLN2症例6例を見いだした(論文作成中)。これまでNICCD症例219例とCTLN2症例155例を分子遺伝学的に診断し、その特徴と診断基準をGeneReviews(Kobayashi & Saheki)[www.genetests.org]にまとめた。さらに、従来の治療法:大量の糖質投与は高アンモニア血症と細胞質NADH上昇に繋がり、CTLN2をiatrogenic diseaseにしていたと考えられる。一方、CTLN2の脂肪肝はnon-alcoholic steatohepatitis(NASH)の肝組織像に合致することを明らかにした。肝移植CTLN2症例の調査では、代償期すでに不定愁訴や精神神経症状などが認められ、39%(7/18)がてんかんと初期診断されていた。これまで解析したCTLN2症例157例では、33例がてんかん、2例がうつ病、4例が統合失調症などと診断されていた。 てんかん症例237例の変異検索では4例の保因者を検出した(1/59)が、一般集団の保因者頻度(1/65)と比べて有意な差は認められなかった。237例は、乳児重症ミオクロニーてんかん、広汎性てんかん熱性けいれん、良性家族性新生児けいれん、良性家族性小児けいれん、前頭葉てんかん症例であるので、今後さらなる検討が必要である。
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