研究課題
プラダー・ウィリー症候群(PWS)は筋力低下、精神・神経・運動の遅れ、摂食亢進・肥満などを呈する遺伝子疾患で、15番染色体q11-13の異常が原因の多くであることが知られている。PWS患者の食欲は非常に強く、摂食亢進・肥満によって糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病になりやすく、PWS患者に深刻な影響を与えている。一方、申請者が発見したグレリンは強力な摂食亢進作用を有するペプチド・ホルモンであり、PWSでは血中グレリンが著しく上昇していることから、PWSの摂食亢進はグレリンの作用によるのではないかと考えられている。本研究では過食とグレリン遺伝子発現調節の関連を探るために、グレリン遺伝子のプロモーターの解析を行った。ヒト・ゲノム・ライブラリーからヒト・グレリン遺伝子のプロモーター領域を単離した。これをGFPベクターに組み込み、レポーター・ベクターとした。グレリンを発現している胃粘膜腫瘍由来ECC10細胞にトランスフェクションし、グレリンのプロモーター活性を調べた。またいくつかの転写因子がグレリン遺伝子発現に関与していることを見いだした。グレリンのプロモーター領域約2Kbを組み込んだベクターで、GFP蛋白の誘導による発光活性がみられた。今後、グレリン遺伝子の転写調節に関与する因子を明らかにしていき、遺伝子レベルでの過食のメカニズム解明につなげていきたい。またわれわれは食餌中の脂肪酸がグレリンの脂肪酸修飾基に影響を与えることを見いだした。すなわち、炭素数8個のオクタン酸を摂取させるとオクタン酸で修飾されたグレリンの産生が増加し、炭素数6個のヘキサン酸を摂取させるとヘキサン酸で修飾されたグレリンが増える。この摂取した脂肪酸によるグレリンの脂肪酸修飾過程には炭素数6〜10の中鎖脂肪酸が有効で、グレリンの脂肪酸転移酵素は中鎖脂肪酸を転移する新しいタイプの酵素であると考えられる。中鎖脂肪酸はこれまでもっぱらエネルギー源としての役割がよく知られていたが、グレリンの脂肪酸修飾から活性化にも重要であることが明らかになった。
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