研究課題
<結果>東京女子医大母子総合医療センターでフォローアップ中の早産児の成長後の血圧と新生児期の投与Na、K量と血清Na濃度との比について検討を行った。その結果、投与Naと血清Na濃度比と6または9歳時の拡張期血圧の間の逆相関関係が最も強かった。これは腎臓でのNa貯留能と成長後の拡張期血圧が関係することを表わす。すなわち、新生児期の尿中へのNa排泄量と拡張期血圧が正の相関関係であることを示した。一方、早産児にどの程度低Na血症を認め、その背景因子が何であるかを後方視的に検討した。在胎期間28週未満の超早産児216例中、57例(26%)に生後1週以降に血清Na130mEq/l以下の低Na血症を認めた。低Na血症を認めた群と認めなかった群で背景因子を比較したところ、在胎期間、出生体重、慢性肺疾患の合併率に有意差を認めた。発症群と非発症群の在胎期間は25.1±1.4週と25.9±1.2週であった。出生体重は発症群754±156g、非発症群876±175gであった。慢性肺疾患は発症群の79%に非発症群の52%に認めた。したがって、早産児の低Na血症は、未熟性と慢性肺疾患の合併に関与していることが明らかとなった。すなわち、早産児に認める成長後の生活習慣病の発症は、早期産そのものが関与するのか、早期産の結果認められる新生児期の低Na血症がより重要であるかが問題となった。そこで、より多数例での多変量解析が必要となった。また、早産児で低Na血症を認めた群と認めない群の間で副腎皮質機能を比較したところ、両群でコルチゾール濃度に差を認めなかったが、低Na群でコルチゾールの前駆物質の上昇が認められた。これは、副腎皮質は刺激されているが、必要なホルモンの合成効率は低下している可能性が示唆された。<考察>早産児の低Na血症と成長後の血圧の間には逆相関関係が示唆されたが、低Na血症発症群と非発症群の背景因子に関しては十分に解明できていない。多変量解析と副腎皮質機能測定で低Na血症と成長後の血圧の関係をさらに明らかにする必要がある。
すべて 2005
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日本未熟児新生児学会 17
ページ: 57-67
臨床婦人科産科 59
ページ: 1624-1627