実験計画に基づいて、遺伝子発現解析および組織学的評価を行った。 1.方法と結果 (1)実験動物の準備:生後7日齢オス、Wister rat20匹を2群に分けた。直腸温サーモメーターによる体温管理下、低体温群(34℃、24時間飼育)と対照群(常温(38℃)、24時間飼育)である。大脳を摘出後、大脳皮質と海馬に分け、液体窒素に入れて急速凍結後低温保管した。また、一部のラットの大脳は4%パラフォルムアルデヒド液で固定後、組織学的検索に用いた。 (2)遺伝子発現解析:(1)で得られた海馬の凍結組織からRNA抽出を行い、DNAチップ(Affymetrix)に供した。低体温群と対照群との間で発現差を比較し、発現差があるものを拾い上げた。これを2回繰り返し、いずれにも挙ってきている遺伝子を新生仔低体温で変動する遺伝子と考えた。3倍以上の発現差があるものは159遺伝子、0.3倍以下の発現差があるものは93遺伝子であった。 (3)組織学的検索:(1)で得られた固定後組織からパラフィンおよび凍結切片を作成し、HE染色とNissl染色を行った。低体温群と対照群との間で明らかな差はなかった。 2.考察 新生仔低体温による形態学的な脳損傷はないにも関わらず、多くの遺伝子でその発現の挙動が異なっていた。これらの中に神経細胞保護作用を有する遺伝子が含まれているものと考えられる。今後、遺伝子機能の検索と組織発現の確認を通して絞り込みを行う。
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