実験計画に基づいて、遺伝子発現解析および組織学的評価を行った。 1.方法と結果 (1)遺伝子発現解析:前年度の実験結果から、神経成長因子関連遺伝子とインターロイキン、ケモカイン関連遺伝子において、低体温群と対照群との間で有意な発現上昇がみられた。これら全ての遺伝子についてreal-time PCRを行い、神経成長因子関連遺伝子に着目した結果、グリア細胞由来神経成長因子(glial derived neuronal growth factor ; GDNF)が発現差を認めた。 (2)組織学的検索:作製してある新生仔低体温モデルラットの凍結切片を作成し、HE染色とNissl染色、および抗GDNF抗体による免疫組織化学とウエスタンブロットを行った。染色標本による検討では、低体温群と対照群との間で明らかな差はなかった。しかし、ウエスタンブロットによるGDNFの発現は、低体温群で有意に上昇していた。 2.考察 新生仔低体温モデルラットでは、形態学的な脳損傷はないにも関わらず、多くの遺伝子でその発現の挙動が異なっていた。その中から、GDNFを見出した。GDNFが低酸素虚血負荷動物の中枢神経系において、発現していることが既に報告されている。臨床的にヒト新生児仮死の低体温療法の病態を考えると、低体温による高GDNFが、新生児の低酸素性虚血性脳障害に治療的影響を及している可能性が考えられる。今回得られた知見から、BDNFによるin vitroおよびin vivoで治療的研究を進める必要がある。
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