本研究は、我々が発見してきた主に皮膚組織に発現しているラミニンα3鎖由来の活性ペプチドをキトサン膜に固定化することにより、皮膚組織特異的に作用する安全で機能的な人工基底膜を創製し、従来の治療に抵抗する下腿潰瘍、瘢痕部潰瘍、褥創など難治性皮膚潰瘍に対して臨床応用可能な医用生体材料の開発を目的としている。 ラミニンα3鎖由来の活性ペプチドに細胞遊走活性があることを確かめた。その後、ラミニンα3鎖由来の活性ペプチドをキトサンに結合させる。ペプチドとキトサンの結合方法は、毒性が少なく既に良好な結果が得られている二価官能試薬(クロロ酢酸)を用いて行なう。機能ペプチドのN末端にシステインを付加したCys-ペプチドを合成し、キトサンにはアミノ基を介して二価官能試薬を付加させる(クロロアセチル-キトサン)。次に、アルカリ処理によってクロロアセチル-キトサン膜を作成し、Cys-ペプチドをSH基を介して膜に結合させ、ペプチド-キトサン膜を調製した。 ペプチド-キトサン膜上に、角化細胞を加え、細胞特異的な接着活性を測定した。細胞接着実験は無血清条件でおこなったところ、角化細胞はペプチド-キトサン膜に接着した。 1夜培養後、マウスの皮膚欠損層にペプチド-キトサン膜のみ、並びにペプチド-キトサン膜+角化細胞を戻していく実験を計画した。予備実験では、この角化細胞-人工膜の形で、創傷治癒がみられるが、現在その治癒が角化細胞を加えた場合と比較検討中である。
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