研究概要 |
本研究は、我々が発見してきた主に皮膚組織に発現しているラミニンα3鎖由来の活性ペプチドを皮膚組織特異的に作用する安全で機能的な人工基底膜を創製し、従来の治療に抵抗する下腿潰瘍、瘢痕部潰瘍、褥創など難治性皮膚潰瘍に対して臨床応用可能な医用生体材料の開発を目的としている。 ラミニンα3鎖由来の活性ペプチドに細胞遊走活性があることを確かめた。 その活性は、マトリックスメタロプロテイナーゼ、シンデカン、インテグリンを介して発現することが判明した。またその作用は、p38MAPKの活性化を利用していることも明らかにした(未発表)。次に実際のろペプチドを成体に応用するため、さらに活性をあげるべく、活性ペプチドのN末端にシステインを付加したCys-ペプチドを合成し、サイクリックペプチドを合成し、細胞接着活性がさらに増加したことを確かめた(Kato-Takagaki Kら.Cyclic peptide analysis of the biologically active loop region in the laminin alpha 3 chain LG4 module demonstrates the importance of peptide conformation on biological activity. Biochemistry 46:1952-1960,2007)。マウスを用いた皮膚潰瘍に対し直接投与すると明らかに治癒を促進することが示唆された。その作用機序は、上記の分子が複雑に関与していると考える。人工基底膜を担体を用いて生物に応用するところまでは至っていないが、ペプチドのサイクリック化により効果の増強、また動物実験での直接投与による効果を確かめ得たことが実績として得られた。
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