研究概要 |
マウスの皮膚を用いた検討により、表皮・真皮ともにHoechst 33342を強く排出するSP細胞集団が認められ、真皮よりも表皮の方により多くの細胞が認められた。これらはカルシウムチャンネルブロッカーであるベラパミル投与によってほぼ消失した。新生児マウスではSP細胞の割合が5-10%認められたが、生後1ヶ月以降急速に減少した(0.1-0.5%)。SP細胞はnon-SP細胞と比べてα-6 integrin,β-1 integrin, Sca-1,Keratin 14,Keratin 19が強陽性で、CD71,E-cadherinが弱陽性であった。また、SP細胞の方がnon-SP細胞と比べてコロニー形成能は高かったが、セルソーターによる機械的なダメージが認あられたので有意差の判定には慎重にならざるをえない。低密度培養条件の検討として各種feeder細胞を用いているが、未だ有意差をもった至適条件はえられていない。表皮細胞から浮遊培養にてsphereを形成させたが、真皮の細胞に比べて形成率は非常に低かった。次に、versican-GFP transgenic mouseを用いた検討ではGFP陽性細胞は毛乳頭細胞に相当すると考えられている。このGFP陽性細胞のSP比率は3.5%であり、GFP陰性である他の真皮成分(0.1%)よりも高かった。これまでの結果より、表皮SP細胞は他の細胞と比べて報告されている幹細胞マーカーを強く発現する傾向があり、培養にて強い増殖能を示した。毛乳頭細胞のSP比率は他の真皮成分より高く、毛髪誘導能を有する毛乳頭細胞は幹細胞としての性質も十分に有していると考えられた。
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