マウスの皮膚を用いた検討により、表皮・真皮ともにHoechst 33342を強く排出するSP細胞集団が認められた。新生児マウスの表皮ではSP細胞の割合が5-10%認められたが、生後1ヶ月以降急速に減少した(0.1-0.5%)。新生児マウス真皮の細胞においてはSP細胞の割合は0.1%程度であったが、毛の毛乳頭細胞を選択的に採取して検討したところ、SP細胞の比率は3.5%に上昇した。ただマウスの毛は新生児期は比較的成長期にそろっていることが原因かもしれない。その後は3-4週間の毛周期を持つことから解釈に当たっては毛周期を考慮する必要があると思われた。セルソーターによるSP細胞の単離は可能であったが、機械的なダメージが認められたので、上皮細胞の大量培養は困難であった。そこで通常の皮膚の細胞を用いて培養条件を検討し、EGF(上皮細胞成長因子)とcholera toxinを添加することによって、従来より長期大量培養できることが判明した。一方、マウスの頬髭から毛乳頭部だけを単離し、毛乳頭細胞を培養する系においてbFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)と10%FBS(牛胎児血清)を添加すると、毛乳頭細胞が大量に培養でき、しかも長期に毛包誘導能を維持できることが示唆された。これまでマウスの角化細胞はfeeder細胞がないと増殖しにくいとされていたので、今回の検討により、トランスジェニックマウスなどの解析にも応用できる可能性が示唆された。また毛乳頭細胞は培養すると毛包誘導能が低下することが問題であったが、今回の検討により改善が見られたので、今後はヒトの細胞においても同様であるか検討していきたい。
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