貫通型マイクロダイアリシスプローブを用いて、松果体近傍の脳室内メラトニン濃度を長期間にわたって連続して測定するシステムを作成した。被験体にはメラトニン合成能を有するCBAマウスを用いた。プローブは、ネンブタール麻酔下で松果体近傍の脳室内に植え込んだ。手術から回復したマウスをホームケージに移し、リンゲル液を1μl/分の流速で送液してサンプルを1時間毎に回収した。回収したサンプル中のメラトニン濃度はHPLC法によりオフラインで分析した。また、ホームケージの天井に設置した赤外線センサーを用いて活動量についても1時間毎の連続測定を行った。 その結果、メラトニン検出に成功したマウスについては20日以上にわたる長期間モニタリングが可能であった。マウスのメラトニン分泌パターンは2峰性を示した。すなわち、夜明けと共に徐々に上昇して暗期開始後に1回目のピークに達した。その後一旦減少後急激に上昇して暗期開始後8-9時間経過して2回目のピークに達した。明期のメラトニンの上昇は、ラットではみられず、マウス特有の現象と考えられた。そこで、暗期と明期に出現する両メラトニン分泌が神経活動由来か否かを調べた。逆透析法によるテトドロトキシンの脳室内投与は明期のメラトニン分泌には影響を与えなかった。いっぽう暗期の分泌は著明に抑制された。したがって、明期のメラトニン分泌は交感神経活動によらないことが示唆された。また、CT20に光パルス(15分間)を与えると、脳室内メラトニン濃度は著明に抑制された。逆に、活動量は一過性に増加した。また、メラトニンリズムの位相は翌日から約1時間前進したが、活動量リズムの位相前進は2日後になってようやく認められた。脳室内メラトニン濃度は松果体活動を直接反映すること、活動量と比べより鋭敏な位相マーカーになりうることが示唆された。
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