研究概要 |
本研究の目的は社会的意思決定の神経基盤の解明であるが、そのためには、まず社会的状況ではない場面での意思決定(対人場面のように他人の考えや行動を予測しながらの意思決定ではなく、人が一人でいる状況で行うような意思決定)に関わる神経活動を明らかにすることが必要となる。そこで平成16年度は本研究の準備段階として、社会的要因を含まない意思決定課題(ギャンブル課題)施行時の健常者での神経活動を、事象関連fMRIを用いて検討した。結果、ギャンブル課題の最中、特に「危険予期」の要因と関連して、健常被験者では内側前頭前皮質が有意に賦活されることが明らかになった。さらに、この内側前頭前皮質の賦活の程度とギャンブル課題の成績との間には、被験者間で相関がみられることが示された。この成果は、第7回認知神経心理学研究会(平成16年8月6-7日,三原)、第28回日本神経心理学会(平成16年9月17-18日,広島)、第27回日本神経科学大会(平成16年9月21-23日,大阪)、第28回日本高次脳機能障害大会(平成16年11月25-26日,舞浜)、京都大学心理学連合COE国際シンポジウム(平成17年1月28-30日,京都)で報告し、また学術雑誌(Fukui et al.,Neuroimage 2005)で報告した。本年度の後半では、引き続いて、社会的意思決定課題(ゲーム理論の分野でチキン・ゲームと呼ばれる一種の対戦型ゲーム課題)のコンピューター版の開発を行った。現在、この課題を施行中の神経活動を事象関連fMRIを用いて測定、解析を始めている。
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