研究概要 |
前年度に施行実施した「社会的要因を含まない意思決定課題(ギャンブル課題)」施行時の健常者での神経活動の解析(Fukui et al., 2005)に続いていて、本年度は、「社会的意思決定課題(ゲーム理論の分野でチキン・ゲームと呼ばれる一種の対戦型ゲーム課題)」のコンピューター版を開発、の課題を施行中の神経活動を事象関連fMRIを用いて測定、解析を行った(Fukui et al.,in press)。 この課題では、被験者は対戦相手の行動を予測しながら、時には威嚇的に時には融和的に社会的戦略を使い分けながら自分の行動を決めてゆく必要があり、他者の心を読み取る能力(mentalizing)が強く要求される。結果は、このような他人の心を読みながら威嚇と融和を繰り返す課題では、従来から他者の心の認知について重要と考えられてきた傍帯状皮質と上側頭溝周辺皮質の活動が認められたが、これら2つの領域の活動パターンには差がみられ、上側頭溝周辺皮質の活動は、被験者の行動パターンにかかわらず相手の心の予測と関連して一貫してみられたのに対して、傍帯状皮質の活動は被験者が威嚇戦略をとるとき、すなわちより社会的に危険な戦略をとるときにのみ特に強く認められた。この結果からは、従来からmentalizingとの関連で指摘されてきていた脳領域は領域ごとに異なる役割を持っており、傍帯状皮質は特に社会的状況における危険予期場面において重要な役割を果たすことが示唆された。
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