研究概要 |
初年度に「社会的要因を含まない意思決定課題(ギャンブル課題)」の神経活動の解析(Fukui et al.,2005)、前年度に「社会的意思決定課題(ゲーム理論の分野でチキン・ゲームと呼ばれる一種の対戦型ゲーム課題)」の神経活動の解析を行った(Fukui et al.,2006)。最終年度である本年度は、これら2つの結果から得られた実験結果の総合的解釈を試みた。上側頭溝周辺皮質の賦活が社会的意思決定課題においてのみ認められたのに対して、両課題は社会的要因を含むか含まないかという点で異なるにもかかわらず、前部傍帯状皮質には共通して活動が認められた。さらに、社会的要因を含まない意思決定課題」、「社会的意思決定課題」のいずれにおいても、前部傍帯状皮質は、これらの課題を施行しでいる最中、特に「危険が目前に迫っている状況」と関連して強く活動した。これらの結果からは、上側頭溝周辺皮質と前部傍帯状皮質は、いずれも他者のこころのモニターにとって重要な領域であるが、両者の役割は異なっていることが推察され、後者すなわち前部傍帯状皮質は、本来は一般的な危険予期システムであったものが、複雑な社会状況を生きる人間において、社会的状況における危険予期システムへと精緻化したものではないかと考察した。これらの成果は複数の学会で一般演題・シンポジウム演題として報告し、また学術誌の総説としてその成果の一部を報告した(村井2006,村井2006)。
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