本研究の目的は一卵性双生児統合失調症不一致例のリンパ芽球の遺伝子発現量の測定から病態解明への手がかりとなる可能性のある候補遺伝子を探索を行うことである。理化学研究所・脳科学総合研究センターにおける倫理委員会承認のもと、一卵性双生児統合失調症不一致例2組、対照例1組に口頭及び書面にて研究の意義、方法を十分に説明し、同意を得た上で採取された末梢血のリンパ球からB95-8細胞株由来EBウイルスを用い芽球化した細胞について、DNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現探索をAffymetrix社のHu133Aチップを用いて行った。解析ソフトGeneSpring(Silicon Genetics)を用いてそれぞれの双生児間における遺伝子発現の違いについて検討したところ、全体的な遺伝子発現変動は1ペアでは対照組より大きいが、もう一組では対照ペアとの差がはっきりしなかった。発現変動の大きかったペアについて発現量が低下していた遺伝子の1つであるケモカインレセプターについて候補遺伝子と考え、遺伝子発現及び遺伝子多型について健常者及び統合失調症患者由来の細胞もしくはDNAを用いてケースコントロールスタディーを行った。発現量は定量的PCR法にて測定し、遺伝子多型の判定はTaqmanプローブ(AppliedBiosystems)を用いて行った。preliminaryな解析結果では、発現量について差はみられず、遺伝子多型については関連がある可能性が示唆された。ケモカインレセプターと疾患の関連についてさらなる検討が必要であると考えられた。
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