研究概要 |
1.血液検体とデータベース作成について 神経研究所附属の外来施設において、研究協力に同意した過眠症症例からおよび対照群からの血液収集については、ナルコレプシー中核群210例、その他類縁の過眠症から60例、対照群120例の協力を得て、血清、血漿、白血球分画を分離・保存し、順次DNA,RNA抽出を進めた。平行して個人情報保護法に対応した技術的安全管理措置をほどこしたデータベースを開発し、血中の検査所見と臨床症状、検査所見とリンクさせたデータベースの運用を開始した。 2.オレキシンとその受容体に対する自己抗体の発見 上記のうち、実験時点までに収集されたナルコレプシー(中核群および不全型)181例と対照群91例の血清中における自己抗体を、高感度な検出方法であるradio ligand binding assay法を確立して検討した。結果としてナルコレプシー症例にはじめてオレキシンおよびその受容体に対する自己抗体があることを発見した。その頻度は低く、また対照群にも自己抗体が検出されたことから、大部分の症例については、その主な病態とオレキシン神経系に対する自己抗体が関連しないことも判明した。 3.網羅的遺伝子発現解析によって選択された疾患関連遺伝子の発現検討について これまでに死後脳視床下部組織を用いたマイクロアレイ解析により、過眠症(ナルコレプシー)関連候補遺伝子が選択され、さらにTaqman法を用いた定量的RT-PCR法で、合計17個の疾患関連遺伝子が同定された。これらについて血中での発現検討を行い、11遺伝子については白血球中でも定量が可能であることが確認された。今後対照群および未服薬症例の各24-36例ずつについて、候補遺伝子を追加した形で比較定量実験を行う準備をすすめている(未服薬群を収集中である)。
|