研究概要 |
心不全の定量的診断および治療効果判定を目的として、心筋交感神経β受容体に高い親和性を示す放射性薬剤^<11>C-CGP12177を用いて、心筋内の交感神経β受容体密度を定量するPET検査の実用化を試みた。北大病院内のサイクロトロンおよびフォスゲン自動合成装置にて^<11>C-CGP12177の安定した合成プロセスを確立した。動物実験にて^<11>C-CGP12177の安全性を確認した上で、倫理委員会に申請し臨床応用を開始した。 健常者7例、心不全患者16例を対象に、^<11>C-CGP12177心筋PET検査データを収集した。それと並行してPET検査データを解析するためのプログラム開発を行った。はじめに、心筋全体を3次元的に抽出し、さらに16区域に局所心筋領域を自動設定する方法を考案し、まず従来より実施されている心筋血流PETデータに応用し適切性と実用性を確認し、その結果を論文に発表した。 この研究成果をもとに^<11>C-CGP12177心筋PET検査データに心筋抽出プログラムを応用し、心筋全体および局所心筋内の放射能変化を算出し心筋交感神経β受容体密度Bmaxを自動定量するプログラムを開発した。算出された交感神経β受容体密度Bmaxは、健常者9.5±2.1pmol/gに対し,心不全患者では5.3±1.7pmol/gで、有意な低値が算出された(p<0.01)。これらの定量値は,過去に報告されている数値とよく一致し心不全の臨床的重症度と有意な負相関を示した(NYHA classI 7.8pmol/g、classII 5.0pmol/g、classIII 4.8pmol/g、classIV 4.0pmol/g)。心不全の進行に伴う心筋交感神経β受容体の減少を適切に推定し,臨床的に有用な指標になり得ると考えられた。
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