研究課題/領域番号 |
16659318
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小野 公二 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (90122407)
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研究分担者 |
永田 憲司 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (30247928)
鈴木 実 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (00319724)
丸山 一雄 帝京大学, 薬学部, 教授 (30130040)
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キーワード | リポゾーム / BSH / 腸管死 / 血管内皮細胞 / 選択的照射 |
研究概要 |
昨年度の研究によっては平均直径300nmサイズのPEG-BSH-Liposomeを作成し、マウス尾静脈より注入、その後、熱中性子を全身照射し照射後の生存率の推移を調べると、血中硼素濃度から計算した血管内皮細胞の線量が28-36Gyの場合、マウスの死は発生しなかったが、PEG-BSH-Liposomeの増量に因って線量の増加を図った73-91Gy群と87-109Gy群では全てのマウスが12日以内に死亡した。ただ、下血、下痢を認めず、腸管死の第一標的は腸管の毛細血管内皮細胞の死であるとする説に疑問を呈する結果が得られていた。本年度は、回腸クリプトの再生を指標としたマイクロコロニー法によって腸管への急性障害と線量の関係を、PEG-BSH-Liposome投与群とクリプトの細胞に取り込まれるであろう硼素化合物BPA投与群で比較すると、その差は歴然としていた。実験においては、事前にガンマ線による全身照射10Gyを行い、その後、硼素化合物を投与して熱中性子を照射した。PEG-BSH-Liposom群では150Gyでのクリプト細胞の生残率は30%に止まったが、BPA群では5.7Gyで細胞生残率は0.6%まで低下した。PEG-BSH-Liposom群における線量効果関係は従来の光子線の線量とクリプト生残細胞率との関係と比べて、極めて大きな差があった。これらの結果は、血管内皮細胞に大線量の選択的照射を行っても、クリプト細胞死を効果的に誘導する訳ではないことを明瞭に示している。Scienceに掲載された論文の結果から推測される血管内皮細胞が放射線腸管死の第一の標的であるとの説ではなく、クリプト細胞に対する放射線の直接効果が、放射線腸管死の第一原因であるとする従来説を支持するものである。
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