本年度は、今回の研究の主目的である、吸水性の金属コイルの作成と動物を用いた血管塞栓能力の試験を行った。現在試作可能な吸水性コイルは、従来のスプリング式金属コイルに用いられているダクロン糸に替えて、吸水性線維であるランシールを編みこんだものである。これは、血管内において、金属スプリングの拡張力により血管壁に固定され、内腔に飛び出した吸水性線維が血液を吸着し膨潤することにより内腔を閉塞させることを期待したものである。金属コイルへの吸水性線維の編みこみは比較的容易に行え、吸水時間の調整により、カテーテル内腔の通過も可能であった。ただ、線維量を増加させた場合で、カテーテル内に長時間おいた場合は、カテーテル内の通過が不能となることが判明した。これを、2匹のビーグル犬の外腸骨動脈内に留置し、反対側の外腸骨動脈内には通常の金属コイルを留置した。金属コイルにつけられた線維量を同量とすることができなかったため、正確な比較は困難であったが、血流遮断過程には明らかな差が認められた。すなわち、通常の金属コイルとは異なり、吸水性コイルでは、留置時には血流遮断が不十分で、造影で内腔の血流が認められても、5分後には完全な血管閉塞が確認された。これは、血管内腔で、吸水線維が徐々に膨張し内腔を閉塞させた可能性が考えられた。3週後に実験動物をとさつし、塞栓部血管を摘出し組織標本の作製を行ったが、血管内腔は線維と血栓形成により閉塞していた。ただ、線維の膨潤は確認できず、さらに詳細な組織学的検討が必要と考えられた。また、吸水時間の調節により、金属コイルのカテーテル通過性の改善を計る必要があり、より適した吸水性線維の選択が必要と考えられた。
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