本年度は昨年度検討を行った吸水コイルの改良と静脈瘤対応の吸水性コイルの開発を予定した。しかし、吸水性コイルのカテーテル通過性の問題を十分に解消することが困難であった。すなわち、カテーテル挿入時に金属コイルに接着した吸水糸の膨化が開始するため、挿入に手間取ると、挿入抵抗が増し、カテーテル中央部で挿入不能となることが判明した。また、自作のコイルであるため、金属コイルに接着する吸水糸量の正確な調整が困難で、これのばらつきによる挿入抵抗の差も問題となった。挿入抵抗を改善するため、カテーテル内挿入用インサーターやコイルプッシャーにも検討を加えたが、適切な器具の開発には至らなかった。コイルに用いるワイヤーの径にも検討を加えたが、細径になれば同量の吸水糸では挿入抵抗は改善するが、柔軟性が増すためpushabilityは低下した。動物実験での塞栓性は従来と同様見られた。しかし、対象群として用いた、臨床で使用される金属コイルでも塞栓が得られる例が存在し、使用した実験動物が人に比べて血栓性が高く、人体に応用した場合、同様の効果を得ることができない可能性があった。以上、昨年度行った実験で判明した、吸水性コイルにより、吸水糸の膨化により内腔の充満が得られることは再確認されたが、塞栓性やカテーテル通過性の面で、コイル自体の構造の再検討が必要と考えられた。従って、静脈瘤用の柔軟な吸水コイルの開発は行えなかった。
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