研究概要 |
D-アミノ酸と種々の疾患、生体機能との関連性には明らかにするべき点が多い。申請者らは、アミノ酸の種類によっては、癌や膵臓等の組織や細胞でL体に匹敵する量のD-アミノ酸が取り込まれることをこれまでの予備的検討から見出してきた。また、胎生期から老齢に至るある時期に特定のD-アミノ酸が高い濃度で臓器に分布することもこれまでに報告されている。本年度は、現在入手可能な放射性D-アミノ酸の細胞への集積性から新規放射性医薬品としての候補化合物のサーベイをするとともに集積機序の検討を行なった。 チャイニーズハムスターの卵巣細胞CHO-K1は、アミノ酸輸送系としてNa^+依存性のA, ASC及びNa^+非依存性のLを有していることが知られている。本邦で入手可能な13種類の^<14>C標識のD-アミノ酸をCHO-K1に取り込ませ、各輸送系に特異的な阻害剤で取り込み阻害実験を行い、それぞれの輸送系への親和性と分子構造の相関を検討した。その結果、D-Ala, D-Met, D-Phe, D-Leu, D-Tyrで細胞への比較的高い集積性があることが明らかになった。 また、中性アミノ酸輸送系への選択性の検討から、D-Ala, D-Serは、system ASC, D-Met, D-Phe, D-Tyrは、system Lによる輸送に選択性があることが明らかになった。 今後、これらのD-アミノ酸について、マウスなどにおける体内分布の取得とその画像化を行い胎生期から老齢に至る発達段階の各時期及び病態モデルにおける種々の臓器への集積と機序を詳細に検討して行く予定である。また、CHO-K1以外の樹立細胞での発現が知られている他のアミノ酸輸送系についてもD-アミノ酸取り込みについて検討する予定である。
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