研究概要 |
γH2AXのフォーカス形成はDSBの数とも対応しており、これまでの生化学的な手法に比べて非常に高い感度で検出できることから注目されている。昨年度、我々は世界に先駆けて温熱によるγH2AXのフォーカス形成を明らかにし、温熱感受性と温熱誘導γH2AXフォーカス形成率との間に相関性を見出し、X線と同様に温熱でDSBが生成すること、温熱感受性の主要因はDSBであることを報告した[Cancer Res.,64(2004)8839-8845.]。温熱によるγH2AXのフォーカス形成については、国内外の数グループから学会報告されており、我々に続き、論文で報告された。しかし一般的に、温熱によるγH2AXフォーカス形成がDSBによるものではないと考える研究者が多い。その理由の一つとして、DSB認識タンパク質のMre11/Rad50/Nbs1が温熱処理後数時間の間、核外に出てしまうことがあげられる。しかし、温熱処理で核外に出たそれらのDSB認識タンパク質におけるその後の挙動やγH2AXとの関連など未解明なことが残っていた。 そこで本年度は、温熱に対するDSB認識タンパクのNbs1およびMre11とγH2AXの局在を詳細に調べ、温熱による細胞応答を明らかにすることを目的とした。 その結果、温熱処理後0.5時間後にはNbs1とMre11は核外に散在して見られたが、8時間後では既にフォーカス形成をしていたγH2AXと重なる形でNbs1とMre11共にフォーカス形成することが確認された。何故Nbs1とMre11のDSB認識タンパク質がX線と比べて遅れてDSB生成部位に集まってくるのかは分からないが、温熱によってDSBが誘導されていることが強く示唆された。上記の論点はCancer Res.,65,10633,2005にLett to Editorに記載した。
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