研究概要 |
転移性腫瘍の増殖・進展には腫瘍frontierの血管新生が重要であると考えられる。血管新生阻害による抗腫瘍効果はモノクローナル抗体やtyrosine kinase阻害薬によってVEGFを阻害し,血管内皮細胞の増殖を抑制する方策が主であるが,本研究では大腸癌の肝転移に対し,血管内皮細胞を支持する周皮細胞を標的としてより強い抗腫瘍効果を実現することを目的として計画された。 (結果) 1.肝転移の血管構築モデルを樹立した。血管内皮細胞とともに周皮細胞の両方を併せ持つ転移腫瘍を作成した。細胞はKM12smを使用し脾臓から注入する。 2.周皮細胞に存在するPDGFR beta(platelet derived growth factor receptor beta)はSTI571(Greevec)の分子標的となるため、その発現を免疫染色で調べた。周皮細胞とともに癌細胞もPDGFR betaを発現する場合が多く、癌の微小環境を標的とすることにならない場合がある。 3.血管周皮細胞のTIE2 receptorを阻害する合成ペプチド(2種類報告あり)に細胞内取り込みを促進するHIV由来peptideを接合し、更に蛍光標識(FAM)した。これを腹腔内投与し肝への移行を調べた。小腸に取り込みが多くみられ、肝へはほとんど取り込みがみられなかった。 4.Ang-2中和抗体の肝転移巣への影響を調べた。KM12smを用いた場合、VEGF抗体と同じく、Ang-2中和抗体も肝転移を抑制しなかった。 5.皮下腫瘍に対してはAng-2中和抗体は濃度依存性に増殖抑制効果を示した。
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