手術時、不注意によって、体腔内に残される遺残ガーゼは、今日、代表的な医療ミスのひとつである。その防止は、単純な数合わせだけでは不十分で、現在、バリウム糸を一本組み込んだ手術用ガーゼが市販されている。しかし、バリウム糸組み込みガーゼの検出には、レントゲン撮影を要するという欠点がある。 我々は、手術終了時に、"より簡便かつ確実に遺残ガーゼを検出する"新しい方法の確立を目指し、磁性糸を組み込んだガーゼを作成し、磁性ディテクターとの組み合わせによる検出システムの開発研究を行った。(特開平10-277082) 初年度は、コバルト系アモルファス金属繊維(ユニチカ社製作:構成元素CoFeSiB)のモノフィラメント糸(φ50μm)一本を織り込んだガーゼを作成し、"アモガーゼ"と命名した。試作したアモガーゼを用いた豚実験で、ディテクターを体表に接触させると、ガーゼは閉創後、遺残なく検出され、かつ、使用したハンドヘルディテクター(ユニチカ社製)はアモルファス金属糸のみに反応し、手術場の各種金属類には反応しないところから、その有用性は証明された。しかし一方でガーゼの形状に対応して、磁性糸の検出に限界が(3cm〜7cm)があることも明らかになった。(磁性を利用した遺残ガーゼの検知システムの構築 第13回日本コンピュータ外科学会大会論文集 31-32 2004) 次年度は、引き続きアモガーゼを作成し、検出限界の距離延長につき検討した。2枚のボードが一組となった検出用ディテクター(AMOS専用検出器、株式会社リンテック)を用いた測定で、検出距離は30cm〜50cmと、約10倍と検出距離が延長され、一枚のボードをあらかじめ手術台へ敷きこむことにより、肥満症例においても確実な検出の可能性が示唆され、臨床応用への展望が開かれた。
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