研究概要 |
ES細胞の除核法の条件検討結果--超遠心処理は7,500xgで1時間より8,500xgまたは100,000xgで1時間の遠心の方が脱核効率が良かった。遠心時間は30分より60分の方が良く2時間では収率が落ちた。遠心温度は26度以下では脱核効率が非常に悪く、31〜37℃でほぼ同じ収率を得た。密度勾配に使うFicollは70と400の2種が市販されているが差はなかった。遠心時Ficoll中に10μg/mlのDNaseIを添加しておくと特に細胞密度の高い時の分離が良好であった。注目すべき点はサイトカラシンBの添加がなくても、ES細胞の場合は脱核が行われ、しかもサイズの大きいサイトプラストが取れることが判明した。核膜の残存量を抗ラミン抗体を用いたWestern blotで調べた限りにおいて両手法に差はなかった。以上の方法で、収率15-20%、cytoplastの含有率98-99%が得られた。さらにES細胞を融合し4n体の細胞を得てそれを上記同様に脱核するとcytoplastの含有率が99%以上に上昇できることが判明した。 ES細胞由来のcytoplastの性質--体積は元の細胞の60〜70%。タンパク質あたりのミトコンドリア活性とミトコンドリア量はともに約75%で活性度は余り下がっていないことがわかった。ES培地中での培養は3時間までは変化せずその後24時間では30%のviabilityを示した。Cytoplast調整後3時間以内に実験を終えれば生存には大きな変化はないことが明らかになった。 融合細胞の選択に適したES細胞の改変-ES細胞にHSVチミジンキナーゼを導入しGanciclovilやFIAUで死滅する株を得た。同様にネオマイシン耐性の株も得た。また、選択培地で培養することによりHGPRT欠損株の作成も行った。これらの細胞を用いてリンパ球および骨髄細胞系がん細胞であるBa/F3と融合し、細胞の選別を行い、ハイブリッド細胞を得た。 融合法の検討-電気融合法とポリエチレングリコール(PEG)法を検討した。電気融合法は融合効率が高く、一方PEG法は効率は低いが大量の細胞を融合でき、それぞれ長所があり目的に応じて使用することとした。 融合結果-HGPRT欠損のES細胞とTリンパ球や胸腺細胞およびBa/F3細胞との融合によるES様の融合細胞を分離することができた。多くは4倍体のDNA量をもっていた。GPIのアイソタイプも両者の形質を示し融合が確認できた。しかしながら、これらの融合ES細胞は正常ES細胞と異なり心筋細胞に分化できなかった。また、脱核したES-cytoplastとリンパ球およびBa/F3との融合実験では、ES細胞化には成功しなかった。
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