陽イオン化ゼラチンマイクロスフェアと陰性電荷を持つDNAプラスミド(非ウイルスベクター)との複合体を用いて、生細胞に遺伝子導入実験を行うにあたり、今年度はまずゼラチン粒子の作成を行った。粒子は細胞内に取り込まれやすく、また注入しやすさを考え、なるべく小さいものを作成することを試みた。マクロファージなどの貧食系細胞は5μm以下が取り込まれやすいため、まずカチオン化ゼラチンで5μmの粒子の作成を試みた。その結果、このサイズの粒子は生成後の回収率が悪く、また完成しても粒子同士の集塊形成が著しいため、結局的に大きな塊になってしまう傾向が認められ、安定した生成は困難であった。これは、各種Bufferの条件(イオン強度・pH等)を変更して条件検討を行ったが、効果的な対策は見つけられなかった。そこで従来より京都大学再生医学研究所の田畑研で種々の研究に用いられてきた直径20-30?mの陽イオン化ゼラチン粒子を用いてin vitroで遺伝子導入実験を行ったところ、このサイズでもマクロファージ等の貧食系の細胞にはゼラチン粒子の取り込みが確認できた。しかし、繊維芽細胞や血管内皮細胞など貧食能のない細胞には殆ど取り込まれなかった。次に遺伝子の発現について検討したが、ゼラチン粒子が細胞内に取り込まれたマクロファージや樹状細胞などの貧食系細胞では、目的とした遺伝子の発現(?-GALおよびGFP)はほとんど認めなかった。その要因としては、細胞内に取り込まれたゼラチン粒子の分解とそれによる標的遺伝子放出の制御が期待したように行われない可能性のほか、貧食細胞であるがゆえ導入遺伝子が発現する前に、DNase等の作用で分解されてしまう可能性が考えられた。またマウスを用いたin vivoの系(腹腔内投与)では、ゼラチン粒子は主に大網や腸間膜の乳斑組織に集積する像を認めた(投与後3日目に確認)。しかし組織中の遺伝子の解析を試みたが投与後14日めでは既に標的蛋白(?-GAL)の発現はin vitroの系同様確認できなかった、来年度はゼラチン粒子の細胞内での分解を調整する目的で、グルタールアルデヒドでの架橋度の変更などの条件検討を行うとともに、生体内での発現条件を再検討する予定である。
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