昨年に引き続き、ミネソタ大Verfaillie等のグループと直接連絡を取り、彼女らがNature誌に報告したMarrow-derived Adult progenitor cells(MAPC)培養に準じ、あるいはIGF1など他の増殖因子の添加などの培養条件の改良を試みたが、造血幹細胞の株化は報告通りには再現できないことが明らかになった。一年以上の培養努力で骨髄由来間葉系幹細胞株は、GFPマウスであるか否かを問わず、安定して樹立されることから、研究の方向を心臓組織内の心筋前駆細胞の同定に変更し、当初の目的に近い研究を行う事とした。 これまでの研究から、骨格筋筋芽細胞シートによる細胞移植をラット梗塞心に行うと、移植細胞自身は急速に消失するものの、低下した心機能が著明に改善することが明らかになっていたので、同部位で宿主の心筋前駆細胞が活性化され、心機能改善効果を生んでいるのではないかとの仮説を立て、未熟細胞の同定と定量化を試みた。 その結果、 1.筋芽細胞移植後の心筋梗塞部にc-kit陽性あるいはSca-1陽性の増殖細胞(BrdU取り込み細胞)の集積が認められた。 2.この未熟増殖細胞は形態的には小実質細胞であることが示唆された。 3.未熟増殖細胞の密度は、シート移植群が、未処置あるいは遊離筋芽細胞の注入群より有意に高く、心機能の改善度と相関することが示唆された。 これらの結果を、平行する自己筋芽細胞シートによる心不全治療研究の一部として論文報告を行った。
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