末期の拡張型心筋症患者に対する治療法は、心臓移植を除けば、いまだ有効な治療法はない。近年、幹細胞を用いた再生医療は、急速に発展し、血管新生だけでなく心筋再生の可能性も報告されている。本研究の目的は自己心筋細胞と自己骨髄幹細胞移植を併用することが拡張型心筋症に対する有効な治療法になりうるか否かを明らかにすることである。 実験動物として心筋症ハムスター(J2Nk)を予定していたが、心筋症を発症するまでの時間として約6ヶ月を要し、また、心筋症を発症したハムスターから心筋細胞の単離が困難なため、薬物性心筋症ラットを用いることとした。薬物性ラット心筋症モデルの作成は終了した。 まず、我々はIn vitroにおいて心筋細胞と骨髄細胞を併用するメリットを検討した。心筋細胞は成獣ラット心臓から酵素法により単離し、骨髄細胞は大腿骨より採集した。培養骨髄細胞はIGF-1など心筋細胞の生存にかかわる様々な因子を産生していた。また、単離した心筋細胞は骨髄細胞の培養上清を用いて培養したところ、培養3日後の心筋細胞のapoptosisは抑制されていた。また、成獣ラットから単離した心筋細胞と骨髄細胞をラット左室心筋内に移植したところ、細胞の生存が組織学的に認められた。 今後は薬物性心筋症ラットに対する自己心筋細胞と自己骨髄細胞の移植治療を行い、治療後の心機能改善効果を評価する。また、本治療による心機能改善効果が確認できれば、移植した細胞の生存、分化などを組織学的に分析し、そのメカニズムを解明していく予定である。
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