研究概要 |
本年はドナーマウス(C57BL/6)の心臓をレシピエントマウス(同種:BALB/c,同系:C57BL/6)の腹部へ移植し,移植心を移植後2,4,6,10日目に摘出,冠動脈病変の進展,レクチン様酸化LDL受容体(LOX-1)mRNAの発現(RT-PCR),LOX-1蛋白の局在(免疫染色)を検討した. 同種移植心では心拍動は徐々に減弱し移植後7〜11日目で消失したが,同系移植心では強い拍動が持続した.病理組織学的検討を行うと,同種移植心では移植後4日目から血管周囲の著明な細胞浸潤が起こり,6日目には血管内皮の変性・脱落,細小動脈の閉塞,冠動脈の部分的狭窄を認め,10日目には血管内皮がほぼ消失し,太い冠動脈においても内腔閉塞が進行した.一方,同系移植心はほとんど細胞浸潤を認めず,ほぼ正常な血管構築を示した.同種移植心のLOX-1 mRNAは移植後2日目に発現亢進し,4日目から10日目まで強発現が続いた.一方,同系移植心には,非移植心同様,LOX-1 mRNA発現をほとんど認めなかった.同種移植心の免疫染色で,LOX-1蛋白は移植後早期には主に血管内皮に存在し,移植後晩期になると血管内皮は脱落消失し心筋細胞が淡く染色され,心筋細胞でのLOX-1発現が示唆された.以上より,LOX-1は同種免疫反応により移植後早期から発現誘導され,移植心での細胞浸潤,冠動脈の閉塞進展に関与することが示唆された.
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