研究課題/領域番号 |
16659386
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
橋本 信夫 京都大学, 医学研究科, 教授 (40135570)
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研究分担者 |
渡邊 直樹 京都大学, 医学研究科, 助教授 (80303816)
荒川 芳輝 京都大学, 医学研究科, 医員 (20378649)
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キーワード | Rho / mDial / 神経膠芽腫 / 接着班 / SDF-1α / 浸潤 |
研究概要 |
本年度の研究では、まず、新規治療開発に結びつく、悪性神経膠芽腫におけるSDF-1αおよびRho情報伝達系を介した浸潤メカニズムを解析した。その結果神経膠芽腫細胞が神経膠芽腫周囲の正常脳で発現するケモカインSDF-1αの刺激で化学走性を獲得すること、Rhoおよびそのエフェクター分子mDialが浸潤機構の中で重要な働きを担っていること、mDialが細胞運動の必須のステップとなる細胞接着の再構築することを決定した。mDialは、Rho標的分子として単離されたが、培養系線維芽細胞においてプロフィリンを結合しアクチン重合に働き、アクチン束や微小管の並行化を促し、細胞伸長に寄与することを明らかにされていた。 細胞運動時の重要なステップの一つに細胞接着の再構築がある。細胞外基質との接着部位として知られている接着班は、細胞外からの刺激と細胞内の情報が統合され、再編成が行われていくとされ、さまざまな分子の集合体である。すでにRho情報伝達系が接着班形成に関わることが示唆されていたが、Rho情報伝達系が細胞運動における接着班をどのように制御しているかは明らかでなかった。そこで接着班形成蛋白の一つpaxillinのYFP融合蛋白によるイメージングを用いて細胞運動時のRho情報伝達系の制御機構を解析した。その結果、mDial欠失細胞では接着班の再編成が著しく障害された。これらの現象は、RhoがmDialを介して接着班の再構築を制御していることを示すと考えられた。以上の結果をまとめ、現在投稿中である。 これらの結果は、Rho情報伝達系がmDialを介して細胞運動・遊走における極性形成、細胞接着の再編成を行っていることを示唆するものである。しかし、これらの制御機構は運動・遊走する細胞の時空間的に著しく変化すると考えられ、さらに局所でのそれぞれの分子の活性化、局在化を検討することは今後の課題である。
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